第32章 二者択一

食事の後、家族はリビングで談笑していた。

実際には主に古川有美子が塚本慎平の話を聞いていた。この数年間の別々に過ごした様々な経験について。

深く話し込むうちに、古川有美子は初めて知った。塚本慎平は海外で何学年も飛び級して大学を卒業したことを。

卒業後すぐに会社に入ったものの、わずか半年ほどで耐えきれずに逃げ出したという。仕事の話になると、彼は思わず愚痴をこぼし始めた。

「知らないだろ?塚本家の経営がどれだけ大変か。朝早くから夜遅くまで働いて、まるで稲妻みたいに痩せちゃったんだぞ」

古川有美子は彼の今の体格を見て、思わずまた不思議に感じ、からかうように言った。「それって良いことじゃな...

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